初級編6:プロットをたてよう


 プロットってよく聞く言葉だけど、何だろう?
 単語の意味としては辞書をひいてほしい。ここではプロットというものがどのようにして使われるかを述べていきたい。
 何でも、自分で何かを作り出さなければならない時、みんな必ずプロットというものをたてているはずだ。意識していなくてもね。
 たとえば、宿題でレポートを作成しなければならない時、漠然とかき出したところでレポートは出来上がらない。まず、何について書くのか、それを考えるよね。
 絵だってそうだ。何の絵を描くか決まらないうちは、何も描きだすことはできないはず。まあ、やってくうちに当初の思惑とは別の方向に進むことはあるけど、それは別の話。
 日記だってそうだよね。ただ漠然と今日起きた出来事を朝から書き連ねるのは日記じゃない。今日の出来事の中で、何を書くのか、そこにはプロットが存在している。
 シナリオ作成だってそうなんだ。ただ漠然とシナリオを作ると思ったって、取り掛かることはできない。まずプロットありき、なのだ。
 だから、ボクはプロットのことは「とっかかり」として認識してる。特にTRPGにおいては、プロットとは違うシナリオができることもあるし、プロット通りにシナリオができたとしても、実際のセッションはシナリオ通りにならないこともしばしばだし。
 実際にシナリオを作れないと言っている人は、多分、プロットがわかない人なんだと思う。まあ、プロットを形にする手法というものがない場合もあるだろうけど。そのためにこの講座を始めたしね。
 プロットなんてものは、大層なもんではないんだな、これが。
 実際にはこの程度で十分なんだ。
「戦闘を思う存分楽しむシナリオ」
「謎解きで頭を悩ませるシナリオ」
「人探し」
「裏切りと友情」
「ドラゴンが出てくるシナリオ」
「借金を背負うハメになるシナリオ」
 なんて感じだね。
 とにかく、とっかかりになるものなら、何だっていいんだ。たとえば小説を読んで、こんな話をやりたい、って思ったら、それだってプロットになるね。
 ボクの場合なんかは、シーンが浮かぶだけ、ってこともある。巨石に追いかけられてダンジョンを右往左往するシーン、だとかね。
 こうしたものがとっかかりになるわけだ。そして、これをもとにして膨らませたり、削ったり、組合わせたりすれば、シナリオの大枠はできてきちゃうんだな。
 中級から上級になると、セッションハンドリングですべてまかなえちゃったりもする。そうすると、プロットとデータさえあれば、事前の準備は最小限で済む。ボクは「セッションハンドリングマスター」って呼んでるけど、一般的には「アドリブマスター」って言われてる。こういう人たちはその場の思い付きでシナリオを進めてるように見えるけど、実際にはちゃんとプロットが頭の中にあって、それをその場の状況に応じて瞬時にシナリオとして構築していくだけの経験というものがあるんだな。で、その経験というのはいかにたくさんのシナリオを作ってきたか、ようは引出しの多さ、なんだ。
 だから、色々なシナリオを作ってみるのがいいってことなんだな。
 最初からアドリブマスターをやろうとしちゃいけない。いきあたりばったりでは破綻してくるし、何より面白くなくなってきちゃうからね。それに、セッションハンドリングが上達するまでは、シナリオをきちんと用意して事前に備えておかねば、対処に追われてシナリオを構築するどころじゃなくなってしまう。
 ということで、まずは、プロットをシナリオというものにしていかなければならない。そのための手法としては、「ダンジョン」「シティ」「フィールド」ということになる。しかし、それらをどのようにして使うか、つまり料理でいうところの味付けの部分に相当するのが、プロットをシナリオに落とすという作業になる。
 ちょうどいいから、さっきあげたシナリオをちょっと組合わせて、シナリオの概略を作ってみよう。
 まず、「借金を背負う」「裏切りと友情」っていうのが使えそうだ。これに、「人探し」というのを組合わせてみよう。
 パーティに人探しの依頼が来る。程なく見つかるんだけど、その人は悪い奴等に囚われているとしよう。その連中は身の代金を要求するんだな。その額は成功報酬よりも低い金額で、パーティが何とか払える金額に設定しよう。それか、かかった経費は報酬と別、ってことにしておくとかね。
 戦ってもいいんだけど、悪い奴等は数が多く、首領格はかなり手強そうなことを強調する。戦いになっても殺さない程度に手加減して、戦うのが得策じゃないって方向に行くように、データを調整しなくてはならない。なぜなら、ここでパーティが死ぬのはシナリオの本意じゃないからね。攻撃力を低めに設定して防御力を高めに設定すれば、この手加減しているというデータ調整は行える。
 そして、身の代金を払った一行は探し人を連れて帰るわけだけど、ここで帰り道に何か障害を配置しよう。川が増水して橋が流れている、というのが無難かな。橋の手前の街にて滞在することになるけど、有り金を身の代金として使ってしまった一行には滞在費はないよね。だから、無理して渡る方策をとらねばならない。そこで、NPCを一人だす。このNPCは渡し守で、お金を出せば無理して船を出してくれるというんだな。しかし、一行には持ち金がない。そこで、渡し守は無事に連れて帰った後に、自分を手助けしてくれるなら、ツケ(借金)にしておいてくれるというんだな。手助け内容というのは、会話で打ち解けてくると教えてくれるが、ある洞窟に宝捜しに行くことらしい(次のシナリオへの伏線になるんだよ)んだ。で、川を渡った後も、しばらく渡し守はついてきてくれる。ここで友情が芽生えるような演出をするといいかもしれないね。
 無事に探し人を依頼人に届けるんだけど、報酬はくれないし、どうも様子がおかしい。いぶかしむところに、誘拐していた連中が現れるんだな。狂言誘拐だったってわけ。身の代金をふんだくって、冒険者を殺してたってわけだ。流浪の冒険者がいなくなっても気にする人は少ないしね。それに、行方不明人が無事に帰ってきて、冒険者は去っていったと言えば、街の人は納得するでしょ。
 で、一向は捕まってしまうんだな。ここでも殺さずに降伏させるように仕向けるようにね。依頼人は街で殺傷沙汰を起こすのは基本的に嫌がってるってことにしよう。
 そして、一行を捕まえて川のほとりの隠れ家へ連れて行くんだ。そこで処刑するためにね。それを、渡し守が偶然見るんだな。そして、川のふもとで処刑を行うまさに寸前、渡し守が助けに来てくれるんだ。これが「友情」だね。細かいところは後で煮詰めるとしても、大体シナリオの大筋はできたよね。
 無事に逃げた一行は渡し守と一緒に洞窟探検へと行くんだけど、これは次のシナリオだ。そのシナリオで「謎解き」「戦闘を楽しむ」「ドラゴン」なんかを使えばよさそうだってのは、わかってくれるかな?
 さて、こうして色々とあげたプロットを組み合わせてシナリオの骨格を作ってみたけど、プロットが浮かばないって人は、シナリオソースっていうのを利用するのもいい。
 それらを組み合わせてどうシナリオにしていくか、それは自分で色々と試行錯誤していくしかない。でも、そここそがシナリオ作成の一番面白いところで、だからこそGMは面白いんだけどね。その楽しみを知るには、やっぱり沢山シナリオを作ってみるのが一番。
 さて、次はプロットを組み立てて作ったシナリオの大枠を、実際にシナリオとして詳しく落としていく作業について説明しよう。


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