初級編7:プロットからシナリオを組立てる
さて、プロットから大体どんな話をやりたいかは出来上がった。
そうしたら、今度はそれをシナリオの形に落していくんだ。
よくストーリーとシナリオを混同してしまいがちだけど、これはまったくの別物。
ストーリーというものの大枠は、プロットから構築したものになるんだな。実際にシナリオを作成し、セッションを行うと、細部ではセッションごとに違う展開になるかもしれないけど、ストーリーの流れとしては、そこまで劇的に変わるものっていうのはないと思うんだ。
まあ、ストーリーの中でPCに重大な選択を迫って、その答えによってはストーリーが分岐する、っていうシナリオもあるけど、それは例外として置いておこう。
前節で、プロットからストーリーの大枠を組立てたよね。このストーリーというのは細部には変更があるかもしれないけど、基本的には変わらないんだ。
おいおい、それじゃあ一本道シナリオじゃないか、って思う人がいるかもしれないけど、それはちょっと違う。そこがシナリオとストーリーが別物ってトコなんだな。
ストーリーが進行していく展開が1種類しかない、それが一本道シナリオなんだな。
ストーリーの大枠は変わらないにせよ、ストーリーの進行に関しては様々な展開が有り得る、これが目指すべきシナリオの形なんだ。こういうシナリオは、セッションをやる度に全く違う展開になったりして面白い。
さて、シナリオを組立てるにあたって、まずはストーリーをきちんと順序立てて記述していこう。この時、PCの行動によって変化するかもしれないところをきちんと認識しておくといい。逆に言えば、PCと関係なく進行していく部分をきちんと把握することが大事なんだな。
では、前節の例を使ってみよう。
1.依頼人がならず者と結託して狂言誘拐を行う。
2.依頼人の子供を連れて、ならず者達は隠れ家へ行く。
3.隠れ家まで、ならず者たちは身を隠したりはしていない。
※冒険者に辿り着いてもらわないといけないからだね。
4.依頼人が子供の捜索をPCに依頼する。
※実際のセッションはここからスタートする。
5.PCは子供の手掛かりを調べる。
6.PCは子供が誘拐されたことをつきとめる。
7.依頼人から、取り戻してほしいと再度依頼。
かかった費用は後で報酬とは別で払うと言う。
8.PCはならず者の足取りを追う。
※隠れ家のある場所の手前の町で、最近の雨で川が増水し始めていることを報せる。
※↑伏線ってヤツだね。
9.隠れ家にてPCとならず者の最初の対決。
※身の代金を払うように仕向ける。
10.子供と一緒にPCは戻る。
11.帰りに増水で川が渡れない。
12.渡し舟を出してくれるのは屈強そうな男一人だけ。代金は高いが、ツケにしておいてくれる。今度ある場所に冒険に行くのに付き合ってくれるという約束で。
13.依頼人の家に行って、子供を渡して報酬の話になると、ならず者の集団が現れてPCを囲む。狂言誘拐だったことを哄笑と共に伝え、PC達を捕まえる。
「街で殺すと噂になりかねん。丁度うまい具合に川が増水している。放りこんでしまえ!」
14.川まで連行されるPC。野営地で縛られていると、茂みから渡し守が現れて縄を切ってくれる。
15.逃げるなり戦って倒すなりして、大団円。
16.その後はPC次第。依頼人の不正を暴くもよし、渡し守と冒険に行くもよし。ただし、それらは次のシナリオだ。
と、こんな感じかな。
さて、この中でPCの行動に関わりの無い場所、つまりは間違いなく進行していく部分を上げてみよう。
1、2、3、11、13、14かな。逆に言うと、13と14番はPLが文句を言ってもお構いなしに、この状況にして進行させちゃうんだな。下手に抵抗とかされても、時間を使うばっかで面倒だからね。
さて、ちなみにこれは料理にたとえるとレシピみたいなものだ。
レシピというにはまだちょっと欠けてるけどね。そう、それぞれに関してどうやって細部を決めていくかを煮詰めてない。じゃあ、それぞれに対して決めることを上げてみようか。
と、その前に。
まずはこれを決めなくちゃならない。それは、舞台となる世界と場所だ。
システムを決めて、それに即した世界設定と国や街の設定をしていこう。実際にシステムに付随している中から、使える場所を選んだっていいんだよ。
ただ、1つだけ注意。最初の街と、隠れ家の近くの街に行く間に、必ず川があること! これを忘れちゃうとストーリーがあわなくなっちゃうからね。
1.依頼人がならず者と結託して狂言誘拐を行う。
これが今回の事件の発端だね。ここで決めることは、依頼人の名前、職業、社会的地位だ。それと、ならず者との関係だね。後は、これが初犯なのかどうか、ってのもあるよね。職業的には裕福で、地位もある程度高い方が望ましい。
2.依頼人の子供を連れて、ならず者達は隠れ家へ行く。
依頼人の子供の名前を決めよう。男か女かも必要だね。家出をするようなタイプじゃない方がいい。ボク的には親子で結託して悪巧みしてるんだから、バカ息子系がお勧め。
3.隠れ家まで、ならず者たちは身を隠したりはしていない。
PC達が子供の行方を捜索する時に出てくる情報を、ここで考えよう。ならず者達は人目につくように行動している。だけど、誘拐しているのが表立ってるようにはしていない。また、子供と仲良くもしてない。仲良くしてるとグルだってばれちゃうからね。
彼らはどこに立ち寄って、何をするかな。ならず者たちになった気分で考えてみよう。
4.依頼人が子供の捜索をPCに依頼する。
さあ、導入だ。PC達は知り合いなのか、どうやってこの依頼を受けるのか。
そういうことを決めていこう。
5.PCは子供の手掛かりを調べる。
これは「シティ」で行う場所だ。
3番でならず者の行動を考えたら、どこでどういう情報が手に入るかは分かるよね。詳しいことはシティの作り方で説明しよう。
6.PCは子供が誘拐されたことをつきとめる。
これも「シティ」で継続中。
この後のPCの行動は2パターンに別れると思うんだよね。
それは、一旦依頼人に報告に行くというものと、そのまま足取りを追うっていうものだ。そのまま追う場合には7番は不要だから、飛ばすこと。
7.依頼人から、取り戻してほしいと再度依頼。
依頼人は驚き、かつ深刻な表情で「取り戻して欲しい」ことを依頼する。
ここでは、少し大袈裟に驚いてみせるとか、そういう演技がかった感じを演出できるといい。
報酬は相場より高めにして、身代金など、かかった経費は別で支払うってことにする。
ただし、前金は払わない。すべて成功報酬にすること。もし払うとしても、ホントに手付け程度にすることだ。
8.PCはならず者の足取りを追う。
これは「フィールド」で行う。最初に決めた世界設定を元に、国を決めて街や川、隠れ家を配置していこう。
必要なのは、依頼人のいる最初の街と、川向こうの街と隠れ家だよね。セッション時間を短くしたいなら、街と川向こうの隠れ家だけでもいいかもしれない。その場合には、川の両端に渡し守の詰め所が必要になるね。
川を渡る時に、おりからの雨で川が増水し始めてることを演出しておくこと。これが伏線になるからね。
詳しくは後述するフィールドの使い方のところを参照してほしい。
9.隠れ家にてPCとならず者の最初の対決。
隠れ家でのイベントにどの程度の重さを置くかで作り方が変わってくるね。
ここは色んなやり方があると思う。それこそ「ダンジョン」にしてしまうこともできるしね。
でも、絶対に行われることは、ならず者とPCの対決だね。PC達がうまいこと依頼人の息子を連れて逃げようとしても、依頼人の息子が何か盛大なミスをやらかして、バレちゃうんだな。だって、このまま無事に逃げられてもしょうがないんだ、グルだからね。
で、ならず者たちは強いことにしよう。下っ端はともかく、ボスとその取り巻きぐらいは強めに作る。でも、PCを倒すのが目的ではないから、防御を強く、ダメージを小さく設定しよう。
それで、依頼人の息子が敵の手に落ちるようにしよう。んで、身代金を要求するんだ。金を渡せば見逃してやるってね。要求する金額は、PC達の持ち金の合計ぎりぎりにしよう。断ろうとしたら、「別にお前達を殺して奪ったっていいんだぜ」という風に脅すようにすればいい。それでも断ったら、ここで戦闘を行おう。その場合、ダメージを少し高めに設定しなおすこと。武器を持ちかえるとかいう演出を行ってね。
PC達に死人が出ても構わない。それがPC達の選んだ選択肢なんだからね。ただ、死人が出る前にもう一度「身代金を払う気になったか?」と持ち掛けるぐらいはしてもいいよね。
10.子供と一緒にPCは戻る。
これも「フィールド」だね。街から隠れ家までの距離を1日ぐらいに設定して、増水して川が渡れないようになっててもおかしくないようにしておこう。
11.帰りに増水で川が渡れない。
これは「フィールド」に配置されたイベント。色々と試みさせてもいいけど、難易度は高めに設定しよう。失敗したら、何かアイテムとか流されちゃうとか、ダメージを受けるとか罰則を設けてもいい。
12.渡し舟を出してくれるのは屈強そうな男一人だけ。
これは「シティ」で行おう。街の設定は新たに作る必要はないよね。
対岸に渡る方法を探していると、この川の流れで渡し船を出してくれそうなのはある男だけだと分かる。その男についての設定を決めておこう。
まず、増水した川に船を出せるほどの腕の持ち主だということ。そして、彼は冒険者でもあるってこと。今は仲間がいないので一人で仕事をしているが、仲間さえそろえばまた冒険の旅に行きたいと思ってるんだね。
彼は冒険者には好意的だってことだね。それと、彼以外の渡し守は「この流れじゃ船は出せない」の一点張り。どうしても、と言われれば、その彼に頼め、と言うんだな。
彼も、最初は船を出すのを渋るんだ。だけど、PCが冒険者だと知ると、何とかしてくれようとする。「本当なら、危険に見合っただけ金額をもらうとこなんだが・・・今の仕事が終わったら、俺と一緒に冒険に行ってくれるなら、船を出そう」
この一言に到達するまでに、PCがどれだけ渡し守と話をするか・・・この辺りをうまく演出して、友情が芽生えるような展開になるのがベスト。
13.狂言誘拐の発覚。
これは、もうPLが何を言っても有無を言わさずに捕まえることだ。
息子を依頼主に渡すと、態度が何かおかしいんだな。誘拐された息子が返ってきたというのに、涙を流して感謝するでもない。
何か含んだような表情で「ご苦労だったな」とか言うのだ。それにPCが訝しがってる間に、ならず者たちがわらわらと現れてPCを捕まえてしまう。
PLは「いや、俺は剣を抜いて戦うよ」とかって言うかもしれないけど、GMの特権で無理だと告げるように、シナリオに明記してしまおう。
ここで戦闘を行ったりするのは本意ではないからね。魔法とかの扱いにも注意だよ。
で、ここで依頼主がにやにやと悪い笑い方をしながら事情を暴露するのだ。
14.川まで後少しというところの野営地。
捕まったPCたちは、ならず者に連れられて川の方に行くわけだ。
油断とまではいかないけど、PCを縄でしばってならず者は酒盛りをしてたりするわけだ。
そこに、「大きな声を出すなよ?」と例の渡し守が現れるんだな。
「今、縄を切ってやる。偶然見かけて良かったよ」
15.戦闘? 大脱出?
PCたちは鎧までは剥ぎ取られてないけど、武器はさすがに取り上げられていて、一ヶ所にまとめられている。
今のところ、ならず者はまだ事態に気づいていない。
武器はどこに配置する?
ならず者はどのように配置する?
ならず者はいつ気づくかな?
そういうことを考えながら、野営地の状態を考えておこう。全ての可能性を記述することはもちろんできないけど、ここから始まるいろいろな事態を想定して考えておくのはいいことだ。そこで判定がいりそうなことがあれば、それを抜き出して書いておこう。
16.エンディング
さあ、結果を演出しよう。
PCたちはならず者を倒したのか? 逃げ出したのか?
それとも返り討ちにあったのか?
ここでは、シナリオ上は特に書くことはない。
ただ、次回を匂わせる事柄として、
「依頼主の不正を暴く」
「渡し守と冒険に行く」
という選択肢があるけど、それは次回の機会にでも、としておこう。
どうだろう?
これでシナリオの大枠はできたみたいだよね。後は細部を煮詰めるだけだ。
結構簡単にできそうな気がしてこないかな?
それは次節以降で「ダンジョン」「シティ」「フィールド」とわけて説明していこう。