初級編5:システムを決めよう


 さて、シナリオという料理を作るために絶対に必要になる「ダンジョン」「シティ」「フィールド」がどんなものかは説明した。
 今度はそれをどうやって実践するか、を説明しなくちゃならない。でも、その前にいったいどんなシナリオを作成するのか、それが必要になる。
 料理だってそうだよね。「切る」「焼く」「煮る」が絶対に必要な手法だけど、何の料理を作るかを決めないと、どのように「切る」かということは決まらない。
 シナリオも同じ。ダンジョンにも色々な手法がある。でも、その中でどのような手法をチョイスするかというのは、作るシナリオによって左右されるんだな。

 料理を作る際には、材料から決める場合もあれば、和・洋・中といった大枠から決める場合もある。
 シナリオも同様で、材料(プロット)から決める場合もあれば、大枠(システム)から決める場合もある。
 でもまあ、初級編としてはシステムから作成するのが作りやすい。慣れてくると、同じプロットからさまざまなシステムに落としたシナリオを作成できるようになるけど、まずはどのシステムのシナリオを作るのか、そこから取り掛かるのがやりやすい。
 そして、まずは1つのシステムにおけるシナリオの作成手法を確立するのが早く上達するコツじゃないかな。
 料理を例に挙げているけど、TRPGのシナリオ作成としては、料理ほど簡単には幅が利かない。ファンタジーでやったシナリオをサイバーパンクに味付けし直すというのは難しいものなんだ。同じファンタジーで持ちまわすのが難しいものだってある。それは、シナリオには固有の世界観というものがあり、その世界観を無視してシナリオを作成することはできないからだ。
 そして、システムにはそれ自体の「売り」となるギミックも存在する。
 それを無視して作成したシナリオには面白さというものはなかなか付随してこない。それに、そのシステムで遊ぶ理由もなくなってきてしまうんだな。
 だから、本当はまずシステムについてよく学び、そのシステムは何が「売り」でどのようにして遊ぶのが面白いものなのか、それを知らなくてはならない。これは、ルールブックを繰り返し読み、繰り返し遊ぶことでわかるようになってくる。
 だから、初心者や初級者としては、わからなくてもしょうがないし、これは遊ぶにつれてわかってくる。シナリオをたくさん作って遊ぶのがその近道でもあるわけだ。
 だから、初級者編の今回としては、「システムには特色があるので、遊ぶ際にそれを感じるようにしよう」と言うにとどめておく。これを念頭にいれているだけで、上達速度は全然違うからね。

 さて、では使うシステムを決定しよう。
 肉料理を作ることを決めてから、味付けを決定することもあるけど、まあ、それは料理人の思考だよね。ここはまず、ゴハンを食べに行く感覚で決定しよう。
 「今日は和食にしよう」「今日は中華が食べたい」とか、そういう感覚で何を食べるか決めることって多いよね。その感覚だ。
 まず、「ファンタジー」「サイバーパンク」「現代物」なんていう風に分かれるよね。その中から、お店を決めるように手持ちのシステムから選ぶんだ。
 持っていないシステムは当然遊べない。それに、遠慮したいお店があるように、自分がシナリオを作れないようなシステムだってあるよね、それは選ばないようにしよう。
 まあ、プレイヤーから指定が入るときもあるけど、その際はできないならできないとハッキリ言うのも重要かもしれないよ。無理して作って失敗作を遊ぶのもいいけど、時間がもったいないからね。
 初級者のマスターに薦めるとすれば、まずは1つのシステムに特化するってこと。あれもこれも中途半端に手をつけるんじゃなくね。料理の世界だってそうだよね。まず、1軒のお店で長く基礎をじっくり学び、それから他ジャンルについて学ぶのがいいんだ。基礎をしっかりと身に付ければ後はいくらでも応用が効く。
 1つのシステムでじっくりと色々な手法でシナリオを作成できるようになれば、他のシステムを選んだときにも、応用してシナリオを作成できるようになってくる。だから、まずは長く遊ぶに足るシステムを選ぶのがいいんじゃないかな。手軽ってのも重要だけどね。
 ボクが初級者に薦めるシステムは次のシステムかな。ボクはあまり多くのシステムで遊んでないんで、偏ってると思う。身近にいる上級者に意見を聞いたりするのもいいんじゃないかな。

・D&D
・T&T(HT&T)
・ソードワールド

 この3作品はいずれもファンタジーだね。最初はファンタジーでしっかりとしたシナリオを作成できるようになるのがいいと思う。ファンタジーは「売り」がしっかりしていて、シナリオ作成の手法を学ぶにはもっとも適してると思う。現代物やサイバーパンクよりもやりやすいんだな。ボクがファンタジーを最初にやったからかもしれないけどね。
 それに、ファンタジーでは大体シナリオの持ち回りができるんだ。D&Dで作ったシナリオは、データやバランスを整えてあげれば、他のシステムでも使えるってわけ。世界観が似通っているしね。

 というわけで、この次は「プロット」というものについて話してみたいと思う。ただし、これからは前提として「ファンタジー」で話すからそのツモリで。
 サイバーパンクや現代物に手を出すのは初級者から脱皮するときがいいんじゃないかな。「シティ」をある程度モノにしないとシナリオを作れないことが多いからね。


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