GURPS妖魔夜行

 
妖魔夜行の紹介をする前に、まずはGURPSの説明をしないといけないかな。
GURPSとは、包括的で汎用的なRPGシステム、だと作者のスティーブ・ジャクソンは言ってます。つまり、これさえあれば、何でもできちゃうよ、というシステムである。
ただし、何でもできる代わりに、基本となるベーシックセットだけだと何もできないのである。そこに、世界観や追加ルールを加えて、初めてGURPSは遊ぶことができるのだ。
そこで、この妖魔夜行である。妖魔夜行は名前から連想される通り、妖怪になって遊ぶゲームである。いわゆる、ゲゲゲの鬼太郎ができてしまうゲームである。
そして、この妖魔夜行は、GURPS・SUPERが元になっている。つまり、アメリカではアメコミのヒーローやスーパーマンになって遊ぶためのものだったのである。だから、妖魔夜行のデータを使えば、もちろんそれらを遊ぶことだって可能だ。
さて、妖魔夜行はそれを日本風にアレンジしたということだが、そのアレンジのルール的側面はハッキリいってどーでもいいのだ。ヒーローもんが楽しいのは当たり前なのだから。
では、妖魔夜行のどこが優れているのだろう。それは、「妖怪は想いから生まれる」としたところである。素晴らしい。これで、無限に妖怪を作り出せることになったのだ。文献を紐解くまでもなくなった。気軽である、手軽である。そして、その妖怪が生まれることになった「想い」を明確にすれば、その妖怪のイメージが湧いてくる。それによって、たくさんある特殊能力(妖力や妖術)から何をとればいいか悩まないですむようになるのだ。
また、GMも敵妖怪がどんな想いから生まれたかを考えれば、すんなりとシナリオが作成できる。どうして妖怪は人間に危害を加えるようになったのか? 最初から人間を食料にしている妖怪だったのかもしれない。人間によって住処を奪われた妖怪だったのかもしれない・・・
昔から恐怖の対象になってきた妖怪たちは前者であろうし、親しみとともに語られてきた妖怪なら後者かもしれない。
そして、PC妖怪も葛藤を味わうことができるのだ(葛藤こそTRPGの醍醐味である!!)
自分たちの仲間を、人間を守るために倒さねばならない葛藤である。人間に非がある場合はなおさらであろう。しかし、自分たちの産みの親とも言える人間に、PC妖怪はどこまで守る気持ちでいられるのか・・・
妖怪も普段は人間として暮らしている。その中で、正体を知られないように、正体を知らせるべきかと苦悩する。
妖魔夜行はドダバタ勧善懲悪になりがちなヒーローものに、「葛藤」というペーソスを盛り込んだ秀作なのである。
ええ、偏ってますよ、もちろん。

妖魔夜行を遊ぶ時、ほとんどの場合は勧善懲悪ヒーローものになるんだろうなぁ。
なぜなら、その方がシナリオ作るの簡単だから。でも、「葛藤」というものを盛り込んでシナリオを作る努力をしてみてほしい。その時、きっと妖魔夜行の本当の面白さに触れることができるに違いないから。
また、アニメではなく、漫画のゲゲゲの鬼太郎を読んでみることをお勧めする。妖怪のいじらしさがよく分かるはずだ。そして、そのいじらしさを演出してみてほしい。
ダメージの大きさや妖力の効果的な使いかたとか、そんなゲーム的要素で楽しむのは後回しにしてもらいたい。数値で遊ぶのだったら、TRPGではなくテレビゲームをやった方が楽しめるから。もちろん、データが育つ楽しみを否定はしませんよ、自分も楽しみますから(笑)
ただ、そういうデータ的側面に凝るよりは、キャラの「想い」にまつわる設定を凝る方が楽しいのです。そして、本当に妖怪になったつもりで、妖怪の立場で人間社会を眺めてほしい。人間社会の歪みから生まれた妖怪が、一番人間社会の歪みについて分かるはずだから。そして、葛藤してほしい。そして、それを楽しんでほしい。それが、妖魔夜行なのだ!


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