即興漫才

(舞台の袖から出てくる若手漫才師二人)

「あーどもども、優です」
「良です」
「えー、今日は即興で漫才なんかやってみようかなー、なんて思ってます」
「で、単純に即興って言っても、普通にやったらやらせだと思われちゃいますからね」
「ですんで、お客さんからお題を3つほどいただこうかなー、と」
「鶴瓶師匠とざこば師匠の落語のごのパクリですな」
「パクリ言うな、人聞きの悪い」
「事実なんだからしょうがなかろう」
「それもそうか」
「じゃ、さっそくお題をいただきましょう。えーっと、まず最初のお題は、と」
「んーーー、じゃ、そこのおにーちゃん、そ、そこの皮ジャンの」

(自分を指差す客)

「そう、君。じゃあ、お題をくれるかな」
「らっきょう!」
「おい、良、お前が言ってどーする」
「いや、らっきょうだったら、こないだのネタが使えるなー、と」
「即興にならんだろ・・・・待たせてごめん、それでお題は?」

(バンド、との客の答え)

「バンド・・・・何でバンド?」
「巨人の川相のファンなんだろ?」
「つっこむ気すら失せるな・・・・」

(友達とバンド活動してるとの答え)

「あー、なるほど」
「落ちのない答えだな」
「勝ち誇るな。いーんだよ、客なんだから。それに、俺らより面白かったらどーすんだ」
「そしたら、お前とコンビ解消して、あいつと組む」
「ボケ同士じゃ漫才にならんだろーが。あーいい、いい。次のお題だ、次」
「今度は女性にしよう。そこのおねーちゃん。返り血で染まったシャツの」
「普通に赤いシャツって言えよ」

(石像、と客の答え)

「・・・・・・・・・・・また、どうして石像??」
「そりゃー・・・っと、これはネタに使えるから、言うのやめとこ」
「じゃあ、最後は、そこの奥様。そう、あなた」

(ADSL、と客の答え)

「ほうほう。こりゃまた難しいの出てきたね」
「ん、じゃ、ちょっと裏で打合せを」

(数分袖で話し合う二人。合図すると音楽が流れて、二人は舞台の中央へ)

「あーどもども、優です。いやー最近はあれですね、良くん」
「あー、良です。あ、そこのお姉さん、綺麗ですねー」
「話をきかんかい」
「あれで、わかるか。で、何だって?」
「時代はITですよ、IT」
「あー、ITね」
「良くん、君、ITがわかってないね?」
「失礼な、優とかいう名前のくせに、大学で可と不可ばっかだった君とは違いますよ」
「失敬な!! 俺にだって、ちゃんと良も少しあったわ!」
「でも、優はなかったんだろ? その点俺は、可も不可もなかったからな」
「胸を張るな、胸を。お前は大学に入れなかったんだから。そもそも、可もなく不可もなくなんつーのは、良くも悪くもないって意味だ」
「悪くないだけ、君よりましだね」
「あー、まあいいわ。んで、ITなんだけど」
「なめてもらっちゃ困りますね。そこにいるおばちゃんじゃあるまいし、わかってますよ。インフォメーション・テクノロジーだろ?」
「・・・・・って、おい。正解いってどうする。ボケは、ボケ?」
「俺にだって、スランプというものはある」
「威張ることかい。じゃ、ITについて何か言ってみ?」
「ブロードバンドだな。煌びやかでいーんだよ」
「?」
「違うのか?」
「いや、ブロードバンドはわかるんだが、煌びやかってのがわからない」
「色とりどりでな。日本は昔からあーいうの作れたんだから凄いよな」
「いや、何言ってるわけ?」
「ブロードバンドって言ったら、帯だろーが、和服の」
「???」
「これだから、可と不可なヤツは・・・・ボケの説明させるなんて、最低のツッコミだな、おい」
「俺にだって、スランプというものはある」
「威張ることかって。ブロードバンド・・・つまりは幅のある帯。幅のある帯ったら和服の帯しかあるまい」
「・・・そんなのつながるか、おい」
「俺的には十分アリだな。ツッコミがよければ笑いがとれる」
「はぁ」
「どうした、ため息なんてついて、恋煩いか?」
「・・・・・・・」
「ん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「おや? ここはイースター島だったかな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「はいはーい、みなさーん。これが有名なモアイですよー。いつからかここにある謎の石像でーす」

(ぎぎぎぎぎぎと、ゆっくりと良の方に顔を向ける優)

「のぉ! モアイが動いた!」
「誰がモアイじゃ」
「お前」
「俺のどこがモアイじゃ」
「違うのか? ちょっとそこで止まってみ?」
「・・・・・・・」
「ほら、まんまモアイじゃん。鏡見てみ? お前、いかついからそっくり」
「ほっとけ。で、まあ、ブロードバンドは、そうだよな。最近は特に通信速度も上がって、ネットも快適になったしねー」
「そうですか」
「良くんもADSLにしたかね?」
「あー、関西人のてっちゃんね」
「何で鉄道マニアが関係あんだよ」
「えーでーSL」
「いー加減にしろ」

(お辞儀して袖に引っ込む二人)

閉幕


戻る